電離層、シンチレーションおよび衛星信号

セプテントリオのGNSSエキスパート、ジャン-マリー・スリーヴァーゲンへのインタビュー
Septentrio-iono-scintillation-phase-and-amplitude-effect-on-GNSS-receiver
Scintillation affects both phase and amplitude of a GNSS signal

電離層シンチレーションとは何ですか?

GNSS衛星からの信号は、2万キロの距離の大半をほぼ遮られることなく地球へと送られてきます。ただし、地球の大気圏、特に電離層、つまり地球の上空100~1000 kmにある電気を帯びた層でGNSS信号が屈折したり回折したりすると、信号に遅延や歪みが生じることがあります。 

その名が示すとおり、電離層は、太陽からの高エネルギー粒子との相互作用によって帯電または電離した粒子を含んでいます。この電離粒子がなだらかに、または均一に分散されると、GNSS受信機はモデルを使って、電離粒子による衛星信号の影響を考慮することができます。問題は、電離層の粒子が不規則な場合に生じます。この不規則性は電離層の電子密度の局所的な変動であり、GNSS信号の位相と振幅を歪ませて、シンチレーションとして知られる変動を生じさせることがあります。

Iono schintillation distribution map
Distribution of high S4 iono scintillation events across the world, Kintner

電離層かく乱はどこでよく起こるのですか?

シンチレーション事象は、磁気赤道周囲の地域、そして範囲はそれより狭まりますが、南極・北極で最も頻繁に集中して起こります。他の自然現象と同様に、その出現は予測不可能であり、シンチレーション事象は西欧と米国の中緯度地域で報告されています。

Solar cycle shown as a graph
Courtesy of solarcyclescience.com, original image from NASA

電離層シンチレーションはいつ発生するのですか?

太陽の活動は、黒点の数で判断されているように、11年周期で行われていることが十分に立証されています。太陽活動のピーク時期は、太陽フレアが頻繁に発生するという特徴があり、高エネルギー陽子とX線の強力なバーストを放ちます。この粒子が地球の大気と相互作用することで、太陽活動のピークに近い年にはシンチレーション事象が増加します。 

シンチレーション現象は一日の間にも変動を示し、日没になると電離層活動が急激に増加し、これが数時間続く場合があります。 

S4 Ionospheric scintillation events observed in Brazil
Iono S4 scintillation indices observed in Brazil with PolaRxS on 26th March 2011

GNSS測位における電離層シンチレーションの影響とは?

GPS、より一般的にはGNSS(グローバルナビゲーション衛星システム)受信機は、地球を周回する衛星からの信号を使って自身の位置を計算します。太陽活動が活発になると、電離層にいわゆるシンチレーション事象が発生して、衛星信号の質の低下を招く可能性があります。標準的なGNSS受信機の場合、軽度のシンチレーションによって最大数メートル、位置精度が落ちることがあります。さらに大きいシンチレーションが生じると、サイクルスリップが発生するか、極端な場合には信号ロックが全失する可能性があります。このような時期には、普通の無線通信にもシンチレーションで深刻な干渉が生じます。したがって、ブラジルで精密農業を営んでいる場合でも、アラスカで石油探査を行っている場合でも、シンガポールで大規模建設プロジェクトを進めている場合でも、電離層への耐性を必ず高精度GNSSシステムに組み込む必要があります。

厳しい電離層条件下での受信機の使用に関する推奨事項

太陽活動が活発な時期には、衛星からの信号がシンチレーションの影響を受けることがあります。このような厳しい条件下でも最高の測位を確保するために、次のような対策を講じることができます。

  1. セプテントリオの多周波GNSS信号製品をフルに活用し、利用可能な4つの衛星配置とそのすべての信号が追跡に使用されていることを確認します。これにより、最もロバストな測位計算のために良質な信号を使用できる可能性が最大限に高まります。 
  2. 追跡仰角マスクを20度まで上げ、質の低い信号を持つ可能性の高い衛星を排除します。
  3. シンチレーション事象は日没後から午前0時前までの時間帯に多く発生するため、この時間帯の業務は避けてください。 
  4. 上記の手順は、困難な条件下で最良の測位を達成するのに役立ちますが、極端な電離層活動の場合、すべてのGNSS衛星信号が影響を受け、精度が低下したり、測位ができなくなる可能性があります。 
Ionospheric scintillation GNSS signals improved by Septentrio's IONO+algorithm
Ionospheric scintillation GNSS signals improved by Septentrio's IONO+algorithm

IONO+アルゴリズムの強化

緑色の曲線はシンチレーションの影響を受けた測位、青色の曲線は、耐電離層を組み込んだ受信機での測位を示しています。

シンチレーションに悩まされがちな国、ブラジルのさまざまなプロジェクトに携わったダイレクトな結果、セプテントリオはIONO+技術を開発しました。IONO+を搭載したセプテントリオ受信機は、標準受信機なら性能が低下する条件下でも、信号の追跡を続行できます。また、シンチレーション事象を認識して、測位精度に及びそうなすべての悪影響を抑えることもできます。上記の図は、シンチレーション事象の間に固定受信機が計算した高さを示しています。IONO+アルゴリズムが、シンチレーションの影響を受けた信号を正確に特定して測位計算から除去しています。

IONO+技術の目的は、正常になアクティブ電離層と電離層シンチレーション双方の悪影響を軽減することです。標準的なRTK測位では、電離層遅延を補間してローバーで補うために、観測基準点のネットワークが必要です。IONO+があれば、電離層遅延を内部で評価するので、ネットワークは必要ありません。最長40 kmの基線の観測基準点が1つあれば十分です(電離層が穏やかな場合は最長80 km)。

詳細と例については、弊社のテクニカルペーパー、CALIBRA: ブラジルにおける高精度単独測位への電離層シンチレーションの影響を軽減をご覧ください。