多周波とマルチコンステレーションがGPS/GNSS受信機にとって重要な理由とは何でしょうか?
マルチコンステレーション対応の多周波GNSS受信機は、センチメートル単位に及ぶその高信頼性の測位により多くの応用分野で使用されています。 今日販売されている様々なプロ級仕様のGNSS受信機の中でも、受信機がアクセスできる衛星のコンステレーションと信号の量には差があります。最高数のコンステレーションと信号にアクセスできる受信機が、厳しい環境下にあっても最高の測位、精度、復元力を提供します。 また、GNSS信号を通じて利用できる新しいサービスへのアクセスも提供します。 そのようなサービスには、Galileo OSNMA やGPS Chimeraなどのアンチスプーフィングサービス、Galileo HAS、QZSS CLAS、BeiDou HASなどの高精度サービスがあります。
マルチコンステレーションテクノロジー
全地球的航法衛星システム(GNSS)は、宇宙からの信号を測位と測時の情報と共に送信する衛星システムです。受信機はこれらの信号を受信し、この情報を使って自身の地理的位置(緯度、経度、高度)を判別します。
GNSSとGPSの比較
では、GPS受信機とGNSS受信機の違いは何でしょうか?単純なGPS受信機は1つの全地球的航法衛星システムだけを使用しますが、マルチコンステレーション対応GNSS受信機は多数の全地球的航法衛星システムから同時に情報を入手します。そのおかげで、GNSS受信機ははるかに多い数の特定時点の衛星を「見る」ことができます。セプテントリオGNSS受信機は各GNSSシステムのどの衛星にもアクセスして、最大限の測位可用性と精度を得られます。
GNSS | 国 | 衛星数 | カバレッジ | |
GPS | 米国 | 32 | 地球規模 | |
GLONASS | ロシア | 24 | 地球規模 | |
Galileo | 欧州 | 26+ | 地球規模 | |
BeiDou | 中国 |
フェーズ2:15+ |
地球規模 フェーズ2はほとんどが中国の地域 |
|
QZSS | 日本 | 4+ | 日本とアジア太平洋全体 | |
NavIC | インド | 7+ | インド全体 |
表1:GNSSコンステレーションとその原産国、衛生の概数とカバレッジ。
多周波テクノロジー
GNSS衛星はそれぞれ1つ以上の周波数を使って測距信号とナビゲーションデータを送信します。これらの信号は、その信頼性と可用性の点でさまざまに異なります。受信機がアクセスできる信号が多いほど、より多くの情報を衛星から収集でき、計算された位置の精度と信頼性が上がります。
電話、車、他の家庭用デバイスのナビゲーションGPSは通常、1つの周波数上だけのGPS信号またはGNSS信号を使用します。 二周波受信機は、各衛星システムから2つの信号を受信します。一方、多周波受信機はどのGNSSシステムからでも多数の信号を受信します。 そのような多周波受信機はGNSSテクノロジーの限界を打破して、可能な限り最も高精度、高信頼性のロバストな測位を達成できます。
GNSS |
使用される信号 |
GPS |
L1CA、L1P、L1C、L2C、L2P、L5 |
GLONASS |
L1CA、L1P、L2CA、L2P、L3CDMA |
Galileo |
E1、E1b、E5a、E5b、E6、E5-AltBoc |
BeiDou |
B1I、B1C、B2a、B2b、B2I、B3I |
QZSS |
L1CA、L1C、L1S、L2C、L5、L6 |
NAVIC |
L5 |
表2:GNSSシステムおよびセプテントリオGNSS受信機が対応する信号の包括的概要
今後提供されるGNSSサービス
様々なGNSSシステムが、高セキュリティ、高精度の測位サービスで衛星コンステレーションに付加価値を加える方法を探っています。これらのサービスはまもなくGNSS信号を通じて直接提供される予定です。 将来に対応する多周波GNSS受信機を使用すると、これらの新サービスが提供された時点ですぐに利用できます。
これらのサービスはすべて無料で提供されます(CASは有料の予定)。
サービス |
付加価値 |
GNSS |
信号 |
地域 |
状況 |
OSNMA |
アンチスプーフィング |
Galileo |
E1b |
地球規模 |
運用ベータ版 |
Chimera |
アンチスプーフィング |
GPS |
L1C |
地球規模 |
まだ運用されていません |
CAS |
アンチスプーフィング(商業用) |
Galileo |
E6 |
地球規模 |
まだ運用されていません |
HAS |
高精度(デシメートル ~20cm) |
Galileo |
E6 |
地球規模 |
まもなくベータ版が登場 |
CLAS |
高精度(サブデシメートル) |
QZSS |
L6 |
日本 |
運用中 |
SLAS |
高精度(サブメートル) |
QZSS |
L1S |
日本 |
まだ運用されていません |
PPP-B2b |
高精度(デシメートル ~20cm) |
BeiDou |
B2b |
中国 |
運用ベータ版 |
表3: 将来に対応する多周波受信機によって、今後提供予定のGNSSサービスが利用可能
厳しい環境下におけるGNSS測位
GNSS受信機は、少なくとも4基のGNSS衛星に接続されると、自身の位置(緯度、経度、高度)を計算することができます。 RTKなどの補正情報を使用することで、GNSS受信機はその精度を更にセンチメートル単位まで高めることができます。 更に、受信機が「見ている」衛星の数が多いほど、その測位の精度が上がり、厳しい環境下でも測位情報を提供できる可能性が高くなります。
仕事の現場からは、空の眺めが機械、建物、岩、群葉で部分的に遮られることがよくあります。そのため、使用可能な衛星の数が大幅に減ってしまいます。可能な限り多くの衛星システムからの全信号を追跡する多周波GNSS受信機は、可能な限り多くの衛星を「見ている」ため、そのような厳しい条件下でもロバスト性を発揮します。
マルチコンステレーション対応、多周波テクノロジーで厳しい環境下でも可用性を最大化
橋の下や、鬱蒼とした群葉の下にいて空の眺めが完全に遮られた場合はどうでしょうか?GNSS/INSシステムは慣性センサーを使って、最後に把握したGNSS位置への相対位置を計算して、一時的にGNSS信号の受信障害が発生してもその間の情報を提供できます。
多周波GNSS受信機を使用することでどのような利点が得られるのでしょうか?
厳しい環境下でも発揮されるロバストな性能に加えて、受信機がより多くのGNSS周波数にアクセスすることで他のメリットも生まれます。
- 電離層誤差の排除: 一周波と二周波(マルチ)の受信機を差別化する特徴的な主な要因は、一次電離層誤差を排除することで達成できるより高い精度です。 電離層の荷電粒子は、かく乱とGNSS信号の遅延を生じさせます。 受信機が同じ衛星の複数の信号にアクセスできる場合、大きな電離層誤差をすべて排除できるため、数メートルから1メートルのスタンドアロン式の精度が実現します。 IONO+による電離層かく乱回避の詳細をご覧ください。
- 無線周波妨害へのロバスト性:同じ周波数からの他の信号がGNSS信号より強い場合、干渉が発生します。干渉はアマチュア無線家または隣接する電子機器によって引き起こされ、通常は一度にGNSS周波数の1つに影響します。 複数の周波数の信号を使用した場合、周波数の1つに干渉が生じると、受信機は別の周波数に切り替えることができます。 高度干渉回避・監視テクノロジーの詳細をご覧ください。
- マルチパス除去の向上:単一周波数の受信機で使われるL1信号は、マルチパスの影響を受けやすい信号です。 マルチパスは直線的な見通し線信号のひずみです。これは、建物、車、木などの物体から反射した同一の信号によって損なわれることで生じます。 GPS L5、Galileo L1BC、特にGalileo E5-AltBocなどの新しいGNSS信号は、マルチパスに対する耐性がより強く備わっているため、これらの信号を使用する受信機はマルチパス誤差の影響をあまり受けません。 さらに、セプテントリオ多周波GNSS受信機は高度なAPME+アルゴリズムを組み込んで、最高レベルのマルチパス耐性を実現します。
- 精度の向上:多くの衛星にアクセスできることで冗長性が生まれるため、衛星とその信号の統計分析が可能になります。 そのような統計情報を入手することで、受信機は測距信号の偶発的な障害を検出して除去し、測位精度を高めることができます。
- RTKネットワークとの適合性:受信機はGNSS信号を全部受信することができるため、すべてのRTKネットワークと完全に適合します。というのは、特定の信号に関するRTK補正情報が提供されるからです。たとえば、RTKネットワークからE5bに関する補正情報が提供され、E5aに関する補正情報は提供されないかもしれません。
- RTKの迅速な修正とヘディングの初期化:一周波の受信機の場合、RTKで得られる最も正確な測位の精度であるRTK修正を入手するまで最長数分間かかることがあります。受信機が複数の信号を追跡し使用できる場合、測位とヘディングを得るまでの収束時間は(デュアルアンテナの受信機)、数秒に短縮されます。 これは、測位が時々失われて再取得する必要がある厳しい環境下では特に重要です。
- さらなるスプーフィングの検出: 複数の周波数を利用している受信機はこれらの周波数を使ってスプーフィングの追加チェックを行うことができます。さまざまな信号からの距離(衛星までの距離)情報を比較することで、異常を検出してフラグを立てることができます。 スプーフィングとは? GPSのセキュリティを確保する方法は?の詳細をご覧ください。
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