電離層シンチレーションモニタリング
電離層、シンチレーションおよび衛星信号
GNSS衛星からの信号は、地球への20,000キロの道のりの大部分を大幅に妨げられくことなく進みます。しかし、地球の大気圏、特に地球の上空100~1000 kmの間にある帯電した層、電離圏におけるGNSS信号の屈折と回折は、信号に遅延と歪みをもたらす場合があります。
その名の通り電離層は、太陽の高エネルギー粒子との相互作用により荷電したまたはイオン化した粒子を含んでいます。これらのイオン化した粒子が滑らかにまたは均一に分布している場合、GNSS受信機はモデルを使用して衛星信号に与える影響を考慮に入れることができます。電離層に不規則性があると問題が発生します。この不規則性は、電離層の電子密度の局所的なゆらぎで、GNSS信号の位相と振幅を歪め、シンチレーションとして知られるゆらぎを生み出す場合があります。電離層シンチレーション (IS) は通常、以下の2つの指標で特徴付けられます。
- S4: 振幅シンチレーション指数
- σφ: 位相シンチレーション指数
発生地域
シンチレーション現象は、磁気赤道周辺の地域で最も激しく頻繁に発生していますが、比較的規模は小さいもののる極地域でも発生します。他の自然現象と同様、その出現はは予測できません。西ヨーロッパや米国の中緯度地域でもシンチレーション事象が報告されている。
発生時期
太陽黒点の数によって測定される太陽の活動は、よく知られている11年周期に従います。太陽活動のピークは、高エネルギー陽子とX線の強力なバーストを発生させる高頻度の太陽フレアによって特徴付けられます。その後、これらの粒子は地球の大気と相互作用し、太陽活動のピークに近い年にシンチレーション現象を増加させます。また、シンチレーション現象は一日の間にも変動を示し、日没になると電離層活動が急激に増加し、これが数時間続く場合があります。
シンチレーション現象は一日の間にも変動を示し、日没になると電離層活動が急激に増加し、これが数時間続く場合があります。
GNSS測位におけるシンチレーションの影響
GPSまたはより一般的には、GNSS (グローバルナビゲーション衛星システム) 受信機は、地球を周回する衛星からの信号を使用してその位置を計算します。太陽活動の増加は電離層でいわゆるシンチレーション現象を発生させる場合があり、これが衛星信号の質を低下させることがあります。標準的なGNSS受信機では、軽度のシンチレーションは位置精度を最大数メートル低下させます。より強いシンチレーションはサイクルスリップを引き起こしたり、極端な場合には、信号ロックの完全な損失を引き起こしたりすることがあります。通常の無線通信でもシンチレーションによって深刻な妨害を受ける可能性があります。そのため、ブラジルでの精密農業、アラスカでの石油探査、シンガポールでの大規模な建設プロジェクトなど、作業にかかわらず、使用する高精度GNSSシステムに電離層に対するロバスト性が組み込まれていることを確認するようおすすめします。
IONO+アルゴリズムの強化
シンチレーションに悩まされることの多いブラジルで、さまざまなプロジェクトに関与したことによる成果として、セプテントリオはIONO+テクノロジーを開発しました。IONO+を搭載したセプテントリオの受信機は、標準的な受信機にとっては困難な状況で信号を追跡し続けることができます。また、セプテントリオの受信機は、シンチレーション現象を認識し、位置精度に及ぼす悪影響を軽減します。上のグラフは、シンチレーション現象発生時にスタティック受信機によって計算された高さを示しています。IONO+アルゴリズムは、シンチレーションの影響を受けた信号を正しく識別して、位置計算から削除します。
IONO+テクノロジーの目的は、通常のアクティブ状態にある電離層とシンチレーション発生時の電離層両方の悪影響を軽減することです。標準的なRTK測位では通常、基準局のネットワークを用いて電離層による遅延を移動局の位置で補間します。IONO+を使用した場合、電離層遅延は内部で推定され、ネットワークまでは必要ありません。ベースラインが最大40 kmの単一の基準局で十分です。(電離層が静かな状態であれば最大80 km)
詳細情報と例については、当社のテクニカルペーパーをご参照ください: CALIBRA: ブラジルにおける精密単独測位 (PPP) に対する電離層シンチレーションの影響の軽減。